家具製作の図面が読めない発注担当のための“三面図・矩計図・加工図”入門
「家具のOEM・造作を発注することになったが、届いた図面の見方がわからない」「そもそも自分で図面を描けないのに、何を渡せばいいのか不安」——設計や製造の出身でない担当者にとって、家具図面はとっつきにくいものです。
しかし、図面は難しい専門知識がなくても“どこを見ればいいか”さえ押さえれば、驚くほど読めるようになります。むしろ、発注担当が最低限の図面リテラシーを持っておくことは、仕上がりの認識ズレやコスト・納期のトラブルを防ぐうえで非常に有効です。
この記事では、家具図面の中でも特に登場頻度の高い三面図・矩計図(断面詳細図)・加工図の3つを、初めての方にもわかるように解説します。あわせて、図面を確認するときのチェックポイントと、「そもそも図面が描けない場合はどうすればいいか」までまとめました。
なぜ発注担当も図面を読めた方がいいのか
家具製作は、口頭やイメージだけで進めると必ずと言っていいほど認識のズレが生じます。「思っていた高さと違う」「引き出しの数が想像と違った」「現場に入れたら扉が開かなかった」——こうしたトラブルの多くは、図面の段階で気づけたはずのものです。
図面は、発注側と製造側が 「この寸法・この仕様で作ります」と合意するための共通言語 です。ここを読み解けるようになると、次のようなメリットがあります。
・完成前に仕上がりを具体的にイメージでき、修正が早い段階で効く
・寸法や仕様の見落とし(搬入経路・コンセント位置など)を事前に潰せる
・見積もりの根拠が理解でき、コスト調整の相談がしやすくなる
・製造側とのやり取りがスムーズになり、結果的に納期短縮につながる
すべてを完璧に読める必要はありません。「この図は何を表しているのか」「どこを確認すればいいのか」がわかれば十分です。
前提:図面は“立体を平面に写す約束事”でできている
3つの図面を見る前に、家具図面に共通する基本だけ押さえておきましょう。図面とは、立体である家具を、決められたルールに従って紙(平面)の上に写したものです。
縮尺(スケール) 実物大では紙に収まらないため、図面は縮小して描かれます。「1/10」なら実寸の10分の1という意味です。図面上の見た目の大きさではなく、必ず記載された寸法の数字を読む のが鉄則です。
寸法の単位と表記 家具図面の寸法は基本的に ミリメートル(mm) で表記されます。単位が省略されていても mm と考えて問題ありません。「W600 × D450 × H800」のような表記は、W=幅(横)、D=奥行、H=高さ を表します。この3文字は最頻出なので覚えておくと便利です。
寸法線 両端に矢印がついた細い線が寸法線で、その線が示す区間の長さを表します。全体寸法だけでなく、棚板の位置や引き出しの割り付けなど、細かな寸法も寸法線で指示されます。
三面図とは — 家具の“かたち”と全体寸法をつかむ図
三面図 は、家具を 正面・側面・上(平面)の3方向から見た姿 を並べた、最も基本的な図面です。立体をひとつの絵で描くと寸法が正確に伝わらないため、方向ごとに分けて描くことで、形と寸法を正確に共有します。
・正面図:家具を真正面から見た図。幅(W)と高さ(H)、扉や引き出しの割り付けがわかります。
・側面図:横から見た図。奥行(D)と高さ(H)、脚の形状などがわかります。
・平面図:真上から見た図。幅(W)と奥行(D)、天板の形などがわかります。
三面図でチェックすべきこと
三面図は、まず 家具全体の大きさが要件どおりか を確認するための図です。設置スペースに収まるか、幅・奥行・高さがイメージと合っているかを、記載された寸法で必ず確認しましょう。あわせて、扉が右開き・左開きどちらか、引き出しの数と割り付けなど、正面から見える意匠もこの図で確認できます。
豆知識:正面図・側面図・平面図に背面図なども加えて6方向から描いたものを「六面図」と呼ぶことがあります。背面や底面に仕様がある家具では、これらが追加されることもあります。
矩計図(かなばかりず)とは — “縦方向の納まり”と構造を示す詳細断面
矩計図(かなばかりず) は、家具や建物を 垂直に切断し、その断面を詳しく描いた図 です。もともとは建築の用語で、基礎から屋根までを縦に切って各部の高さや納まりを示す図面を指します。造作家具は建物と一体で造られることが多いため、家具の分野でも断面の詳細図という意味で使われ、断面詳細図 とほぼ同じ意味合いで登場します。
外から見える三面図が「見た目」を伝える図だとすれば、矩計図は 家具の“中身”と“縦方向の寸法・納まり” を伝える図です。ここには、外観からは見えない次のような情報が詰まっています。
・天板・棚板・側板などの 板厚(例:25mm、18mm など)
・棚板の高さ位置や、可動棚のダボ穴ピッチ
・引き出しや扉の内部構造、収納内寸
・床・天井・壁とどう接続・固定するか(造り付けの場合)
・部材どうしの接合方法
矩計図でチェックすべきこと
矩計図では、実際の使い勝手を左右する内寸や構造 を確認します。収納したいものが入る内寸が確保されているか、棚板の高さや枚数は適切か、床・天井との固定方法に問題はないか。見た目には現れないぶん見落とされがちですが、「作ってから使いにくいと気づく」事態を防ぐ、重要な図面です。
用語のポイント:「矩計図」は本来かなり詳細な建築断面図を指す言葉です。家具単体の打ち合わせでは「断面図」「断面詳細図」と呼ばれることも多いので、呼び方が違っても“縦に切った詳細図”を指している と理解しておけば混乱しません。
加工図とは — 各部材を1枚ずつに分解し、“どう加工するか”を示す図
加工図 は、家具を構成する部材(天板・側板・棚板・扉など)を 1点ずつ分解し、それぞれをどの寸法で、どのように加工するか を指示する図面です。三面図や矩計図が「家具全体の姿や断面」を表すのに対し、加工図は製造現場で実際に材料を切り出し、穴をあけ、組み立てるための“作業指示書”にあたります。
1枚の加工図には、次のような情報が部材ごとに記載されます。
・部材そのものの外形寸法(縦・横・板厚)
・ダボ穴・ネジ穴・金物取り付け穴の位置と径
・切り欠き、面取り、溝加工などの加工指示
・木口テープやエッジ処理の指定
・部材名・数量、使用する板材の種類
つまり加工図は、「この家具は、こういう部品の組み合わせでできている」という中身の設計を、製造目線で1部材ずつ展開したもの です。造作家具のように部材点数が多いものほど、加工図の精度が仕上がりとコストを大きく左右します。
加工図でチェックすべきこと
発注担当者が加工図を1から検証する必要はありません。ただし部材の点数や構造がイメージと大きくズレていないか、指定した素材・色・エッジ処理が反映されているか といった仕様面の確認には有効です。加工図まで共有されていれば、製造側がどこまで作り込むかが明確になり、後工程での「言った・言わない」を防げます。
用語のポイント:加工図は、現場では「大図(だいず)」と呼ばれることもあります。呼び方は違っても、部材ごとの加工方法を示す図という点は共通です。
あわせて知っておきたい図面・用語
上記3つ以外にも、案件によって次のような図が添えられます。名前だけでも知っておくと打ち合わせがスムーズです。
・詳細図(ディテール図):取っ手まわりや面取り、特定部分だけを拡大して描いた図。
・金物図・仕様書:スライドレール、蝶番、取っ手などの金物や、素材・塗装・色番号を指定する資料。図面と必ずセットで確認します。
・姿図(意匠図):完成イメージに近い、見た目重視の図。社内での合意形成に使われます。
図面が「読めない・描けない」場合はどうすればいい?
ここまで読んで「やっぱり自分だけで判断するのは不安」と感じても、問題ありません。実務では、発注側が完成した図面を用意できるケースの方がむしろ少なく、手描きのスケッチや、参考写真、ラフなイメージから相談を始めるのが一般的 です。
大切なのは、完璧な図面を用意することではなく、「何を・どんな用途で・どこに置きたいか」という要望を伝えられること。そこさえ共有できれば、製造側が図面化・仕様化を担ってくれます。
造作家具・OEM製作センター.com(西部木工)では、スケッチやデザイン図、ラフなイメージの段階からのご相談 を承っています。ヒアリングで用途やご要望を丁寧に確認したうえで、3DCADを用いて図面化・立体化し、完成イメージを共有 しながら進めますので、図面が読めない・描けない方でも安心してご依頼いただけます。徳島の自社工場での国内一貫生産により、小ロットの試作から量産まで柔軟に対応し、仕様が固まっている家具であれば 最短2週間 での製作・納品も可能です。
「こんな家具を作りたいが、どう頼めばいいかわからない」という段階でも構いません。まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
・三面図 … 正面・側面・平面から見た、家具の「かたち」と全体寸法をつかむ図
・矩計図(断面詳細図) … 縦に切った断面で、板厚・内寸・構造・固定方法など「中身」を示す図
・加工図 … 各部材を1枚ずつに分解し、寸法や加工方法を指示する製造現場向けの図
図面のすべてを描けるようになる必要はありません。「どの図が何を表しているか」と「どこを確認すべきか」を押さえておくだけで、発注時のトラブルはぐっと減らせます。そして、図面が用意できなくても、スケッチや要望からかたちにする方法があります。まずはイメージを言葉にするところから始めてみてください。

